気になるイベント突撃取材

カゴができて楽しい!を伝えたくて!

「第40回日本ホビーショー」の会場内で、中高年の女性を中心に賑わいを見せていたのがクラフトバンドを使った手芸体験コーナーでした。クラフトバンドとは、もともとは米袋をしばるための紙の紐で、これを編み上げてかごやバッグなどを作ります。クラフトバンド手芸にはまり、普及に務める松田裕美社長に、その魅力について伺いました。

取材・文=小沢綾子

賑わいを見せる「第40回2016日本ホビーショー」(4月28日~30日開催)のなかでも、来場者にかごの作り方を体験していただくM’s Factoryのブースは大人気でした

クラフトバンドとの出会いは子供の学校の保護者会

――さまざまな素材がある中でクラフトバンドに着目し、クラフトバンドのホビー商品を考えられ販売しようと思ったきっかけは何ですか。

松田 学校から保護者会のお知らせが来まして、「お茶会をしたり、なにか簡単なものを手作りしたりします」とのことでした。行ってみたら、かごバッグを作るということでした。手芸は苦手だったんですが、やってみたら楽しくて。切ったり貼ったりが多くて、手芸というより工作でした。使う道具は、はさみと木工ボンド。家にあるもので出来て材料も500円と安く、その時作る喜びを感じました。作ったバッグをお姑さんにプレゼントしたら「今度これを持ってお出かけするの。これ、うちの嫁が作ってくれたの」と近所の方に言ってくれまして、すごく喜んでくれました。かご1つを編むのにも時間がかかります。その労力には心がこもっています。社交辞令ではない贈り物なので、送った先様が覚えていてくださいます。
私の実体験から、皆さんにもこんな気分を味わってほしいし、喜んでほしい、楽しんでほしいと思って始めました。

――商品の色やデザイン、作り方についてのこだわりや、商品に込められた思いなどはありますか。

松田 色数は日本一と自負しています。「どんな色でもありますよ」という形にしたかったので。色だけでなく、しましまのラインにしたり、ステッチをいれたり、スタッフみんなで考えています。紐をほどいて組み合わせてここにこんな色があったらお客様も喜ぶかもしれないなど、色の名前もみんなで考えています。覚えやすい名前をつけるということで、半分くらいは食べ物の名前が付いています。茶色のしましまはミルクレープにしようとか、ピンクとブラウンだったらいちごチョコパイとか。

クラフトバンドは実用性に優れたコミュニケーションツール

――ビーズや粘土などを使ったさまざまなホビーがありますが、御社のクラフトバンドは他社の商品に比べてどんな特長がありますか。

松田 一番の違いは実用性の高さじゃないでしょうか。カトラリーケースだったらナイフとフォークを入れる。かごだったら果物を入れる。というように、実用的なものが圧倒的に多いところが、他の手芸にない所じゃないでしょうか。
それに作るのに、目が楽です。紐の太さが1.5cmもあるのでザクザク編めます。高齢になって楽にできるものということで、やり始める方もいらっしゃいます。
70代、80代の方々は、自分たちで遊ぶものを作ってきた世代なので、作るということに抵抗がまったくないんですよ。すんなり入ってきていただいています。

――何をきっかけに多くの人が御社のクラフトバンドのファンになっていらっしゃいますか。

松田 誰かの為に何かを作ってあげることで、コミュニケーションが生まれるところが楽しいと言っていただいています。
高齢の生徒さんは、60代~90代の方が多いですが、みなさんお元気です。最初は「お友達がいなくて寂しいから来ました」という方もいましたが、次第にいろんなものが作れるようになると、周囲の方に自分の作ったものを差し上げることが多くなります。お隣りの奥さんにとか、誰かが来た時に「どうぞ、私が作ったんです」とか。もらう方はうれしいし、作った本人は褒めてもらえます。「すごいですね、こんなの作れるんですね」という具合に。年を取ると褒められることは年々少なくなります。「おばあちゃんすごいね!」とみんなが感動してくれるので生き生きしてきます。教室にいらしている皆さんは、かごを編むことで、新しいコミュニケーションを楽しんでいます。

――実際に御社商品をご購入いただいている方(お取引き先)の評判はいかがですか。

松田 介護施設や、お教室開催先などお年寄りの多い所へ講師を派遣して教えていますが、いつも「今度はいつ来るの」と楽しみにしてくださいます。大学の生涯学習のクラスにも行かせていただいております。ここは年齢層が幅広く、若い方もいらっしゃいますが、簡単で、細かい作業もないため入り込みやすいようです。

――御社商品を今後どのように展開していきたいですか。

松田 クラフトバンドは、もともとお米の袋の口を結んでいる米帯(べいたい)という紐です。今、お米はみんなビニールの袋に入っていますから、この昔ながらの米帯は、衰退の一途をたどる運命にありました。それに色を付けて生まれ変わらせ、衰退の危機を乗り越えました。水引も同様です。水引と言えば日本の伝統工芸で、水引を作る技術は素晴らしいのですが、時代に合わずどんどん衰退してきています。それではもったいないと思い、3年くらい前に「数10メートル単位で長い水引を作ってください。そうすれば、私がバッグを編んでお客様に販売します。だから作ってください」と。何十社も声をかけましたが、悲しいことにまったく取り合っていただけませんでした。その後、製紙会社の方に間に入っていただき、四国にある1社だけ取引させていただけることになりました。水引は撥水性もあり、汚れたら洗えます。色もマットな物からメタリックなものまで幅広く作れるので、海外の方にも「日本の伝統工芸の水引でバッグを」というところから沢山の問い合わせをいただいております。

被災地に仕事を運び就業支援を広めたい「メイドイン被災地」

――被災地への就業支援をなさっていると伺いましたが。

松田 内職さんが東日本大震災の被災地域に大勢います。「仮設住宅を職場に」というコンセプトで就業支援を行ってきました。
震災当時は、ボランティアで制作キットを提供していました。次第にこれが仕事になれば働く喜びが湧き、それで収入が得られれば生きる気概につながるのではないかと。企業に「メイドイン被災地」のお話しをすると、みなさん協力してくれて、そこから口コミで広がっていきました。サッカーJリーグの横浜FCとジェフ市原も賛同してくださって、応援バッグを作ろうということになりました。そのバッグも被災地の方に編んでいただいています。

――被災地でお仕事されている方々はどのような方が多いですか。

松田 高齢の方が多いですね。今から働きたいと思ってもたいてい仕事を探せなくなってきます。手に職があればモノづくりの仕事は定年がないのでいくつになってもできます。実際うちには70歳80歳の先生もいっぱいいます。たとえ足がうごかなくなっても手が動けばできるじゃないですか。100歳の先生がはやく誕生しないかなと思いますよ。

――本日はありがとうございました。
■松田裕美(まつだひろみ) プロフィール
株式会社エムズファクトリー 代表取締役 松田裕美
再生紙を使った環境に優しい手芸用紙紐クラフトバンドを販売する。
株式会社M’s Factoryの代表取締役。
一般社団法人クラフトバンドエコロジー協会の代表理事を務める。
クラフトバンド手芸の指導者育成や制作技術の普及・東日本大震災後の就業支援などを行う。かごやバッグなどの編み方を紹介するレシピ本を多数刊行。NHKや、民放各局のテレビ番組にも多数出演。
http://www.shop-msfactory.com/