BOOKS~グランドジェネレーションをスマートに生きるおすすめ本

年を重ねたからこそ読むべき本

定年退職し時間ができた男性や子育てにひと段落ついた女性の中には、前々から読もうと思っていた本を思う存分楽しみたい、そう思っている方が多いのではないでしょうか?

年齢を重ねることは決してマイナスな面ばかりではありません。
若い時に読んでみてそれほど感慨に浸ることがなかった本でも、今ならその内容に頷け、その本の本当の価値がわかるかもしれません。

そんな年齢を重ねた方にぜひ読んでいただきたい本を、歴史/紀行文 /ノンフィクション/女性に読んでほしい本、の順にご紹介します。

<歴史>
■松本清張『昭和史発掘』
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文春文庫新装版 895円

松本清張といえばミステリーの大家と思われがちですが、彼の全作品を読んだ方のほとんどがこの『昭和史発掘』が一番面白かった、と言っているのです。
この本は1巻完了ではなく9巻まであり、「松本清張の最高傑作」と呼ぶ評論家も少なくありません。

特にお薦めの記述は「226事件と515事件とは何だったのか」「桜会と太平洋戦争の関係」「日中戦争のもととなった満州事変は何だったのか」「芥川龍之介の死と小林多喜二の死」あまり知られていない「朴烈事件」などです。

特に「朴烈事件」は後に朝鮮総連と同じように力を持ち、ほとんどの在日韓国人が入っている「民団」の元となりました。
これらを読むだけでも、なぜ昭和が「激動の時代」と言われたのか、その理由が松本清張の巧みな筆力により最初から最後まであっという間に読み終わってしまう作品に仕上がっています。

また読後感も極めて大きい作品です。
特に現在70代後半以上の方は幼かったにしても、太平洋戦争をはっきりと記憶されている方も多いでしょう。
松本清張もその一人でした。まだ少年時代青年時代だった彼が肌で感じた昭和史を自身の体験も踏まえ膨大な資料を考察しまとめています。

あの戦争がどんなものだったのかを知れる貴重な作品でもあります。
また中には「2.26事件」のことをうっすら記憶している方もいるかもしれません。
これを読めば226事件の真相や青年将校たちが、あの時どうしてそういう行動に走ったのか?何を目指そうとしていたのか?その動機をつぶさに知ることができます。

また実際にこれらの事件のあと生まれた世代の人も「自分が生きてきた昭和という時代」を改めて考えさせられる一冊です。
太平洋戦争を含め今改めて見直されている「昭和」をもう一度振り返って考えたい、そんな方に是非読んでいただきたいお薦めの本です。

また松本清張の『邪馬台国』も既成の概念を覆すものであり、古代にロマンを馳せたい方にはお薦めの本です。
ただのミステリー作家ではなかった松本清張の作家としての本当の姿がわかる作品でもあります。

<旅行紀行文> 
■司馬遼太郎「街道をゆく」
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朝日文芸文庫 540円

司馬遼太郎こそ歴史小説の代名詞的な存在ではないのか?
そう思われる方もたくさんいるでしょう。
もちろん司馬遼太郎の書いた『龍馬が行く』に影響され、坂本龍馬が幕末の志士の中で一番リスペクトされる存在になったのは司馬遼太郎の功績の一つです。

また多くの政治家が司馬遼太郎の『坂の上の雲』を愛読書として挙げています。
ですが司馬遼太郎が「もし自分が描いた作品の中で死後最も評価を受けるのはこの『街道をゆく』だろう」と自ら言っているほど心血を注いだ著書がこの46巻に及んだ『街道をゆく』なのです。

彼は晩年この『街道をゆく』にほとんどの時間を割き、亡くなる直前まで46巻目を執筆していました。司馬遼太郎の遺作といっても過言ではないでしょう。
日本国内はもちろん、アイルランド、オランダ、アメリカ、モンゴル、中国、台湾、近代化される前の韓国を、その題名の通り「道(交通)を通してその国の歴史を見る」という新しい視点での紀行文を書いています。

「台湾」を描いている巻では、司馬遼太郎にしては珍しく政治問題にも言及しており、この本を出版したとき台湾の総統であった李登輝の愛読書にもなりました。

この紀行文は決してその地域や国にロマンを馳せ、行ってみたい、と思わせる旅行会社のパンフレットのような作品ではありません。
本当のその土地や国の姿をその文面から「匂い」まで感じられるような著書で、もっと掘り下げてその土地を訪れたい、そう思っている方のためにこの本は存在しています。

「現地の本当の歴史や文化を知ったうえでその土地を訪れたい」
そう思っている方にはぜひ読んでいただきたい傑作です。

<ノンフィクション>
村上春樹「アンダーグラウンド」
100sai2_book10-03
講談社文庫 1,166円

村上春樹といえば「ノルウェーの森」に代表されるように都会的でおしゃれな青年や魅力的な女性が出てくるだけの本でしょ?と思い「今さら読みたいなんて全く思わない」と拒絶反応を示す方も少なくないでしょう。
ですが村上春樹はその小説よりもドキュメンタリー作家のほうが素晴らしい作品が多い、と思っている村上春樹ファンはとても多いのです。

その中でも傑作と呼ばれているのは「地下鉄サリン事件」を扱った『アンダーグランド』です。

地下鉄サリン事件は1995年3月20日に起こり、今もってなおマスコミに登場する日本の犯罪史上最大のテロ事件と呼ばれています。
村上春樹がその事件について書こうと思ったきっかけは「そのときに地下鉄の列車の中に居合わせた人々は、そこで何を見て、どのような行動をとり、何を感じ、考えたのか」を知りたかったからだそうです。

あのマスコミ嫌いで滅多にメディアに登場しない「世界で最も有名な日本人作家である村上春樹」自身が地下鉄サリン事件で被害を受けた人に直接会いに行き取材を行っています。
彼が語る「地下鉄サリン事件」は、当時マスコミが大騒ぎして連日伝えた内容とは一線を画すものです。

村上春樹は徹底して自分の意見や考察を挟むことをせず、ただ淡々と「被害者の生の声」を伝えることに力を注いで書き上げました。
彼の著作にしては珍しい作品といえるでしょう。

この本を読んだ方の感想は一様に「自分が実は地下鉄サリン事件が何だったのかわかっていなかったことを思い知らされた」と言っています。
また『約束された場所』では実際にオウム真理教に入信した若者を取材し、またその延長線上で『1Q84』にオウム真理教を連想させる「カルト集団」を重要なテーマに選び執筆しています。

彼がどうしてここまでオウムにこだわるのか、地下鉄サリン事件とは一体何だったのか、この一冊を読むことでそれがつぶさにわかる本なのです。

<生活> 
■暮らしの手帖社「すてきなあなたに」シリーズ
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暮しの手帖社(絶版)

これはぜひ年齢を重ねた女性に読んでいただきたい本です。
約30年前に出版されたとは思えない、新鮮さを感じる本です。
1月から12月までのそれぞれの月、季節ごとにまとめられているのですが、その短いエッセイの中には「料理とは?」「海外で感じた事」「旅行することの大切さ」「女にとって友達とは」「結婚・離婚について」「孤児院の話」「人生に登場する大切な人々との出会い」などが書かれています。

もちろん若い人が読んでもとても勉強になり面白い本でしょう。
ですが年齢を重ねた女性にとっては共感できる部分がとても多いこと、また一種の「癒し」を与えてくれる本ではないかと思います。
夜眠る前に読む本としては最適な本であり、枕元に置いておくことをお勧めする一冊です。

最近は本離れが進み、書店や出版社は窮しています。
インターネットと違い本は結構値段の張るものですし、活字を読むのが面倒、そう思う方も多いからなのでしょう。
ですが人生において、常にヒントを与えてくれ励ましてくれるのは、やはり本という存在ではないかと思います。
子育てや仕事から解放された今こそ静かな空間で本にのめりこむ時間を作ることは、あなたの人生をもっと豊かにしてくれるに違いありません。

*本シリーズは絶版のものが多いのですが、アマゾン等で中古本が手に入ります。