問題提起!
おひとりさまで生きていくということ 死別、離別、非婚シングル

未曽有の高齢化社会を迎える日本

「これからの日本において、親の介護というものがとんでもない問題になるだろう」ということは常々言われています。
今のシニア世代は、実の親や夫の親を介護することは、長男長女だけの問題であり、その中でも夫の収入だけで十分食べていけた「長男の嫁」の仕事として押し付けることで解決できました。

また今のシニア世代が親の面倒を見た時代は、兄弟が6人7人当たり前だった時代でした。ですから、たとえ長男夫婦が「介護」を引き受け疲れ切った場合でも、他の兄弟が代わりに引き受けることが可能だったのです。
またシニア世代はほとんどが、よっぽどの理由がない限り実家から遠く離れて住むことは少なく、親を引き取る場合もタクシー1台で移動可能な距離に固まって住んでいました。

ですが子供が2人か3人、場合によっては一人っ子のような現代、その少ない人数で長期間親を介護することは可能でしょうか?
また地元以外の大学に進学し、就職先も飛行機や新幹線で行かなければならないほどの距離に住んでいる「シニア世代の子供」は非常に多いのではないでしょうか?

今の世の中は特別な能力や資格を持っている人以外は、一度会社を辞めてしまったらおしまいです。中には介護休暇を申請しただけでいわゆる「肩たたき」に遭ってしまうサラリーマンも多いでしょう。

果たして「自分のこれからの人生をすべて犠牲にしてまで親の介護」をするということが、シニア世代の子供にできるのでしょうか?遠い未来のことのように考えているシニア世代の子供たちですが、もうあと10年以内にはその問題に直面し「どうしたらいいのかわからない」――そんな時代を迎えるに違いありません。だからこそこの問題が国会などで繰り返し議題に上がり、テレビで特集が組まれるのです。

子供を当てにしない生き方

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しかし驚いたことに今のシニア世代の方は、自分の老後において「子供を当てにしていない」という考えを持っている方が非常に多いのです。

一昔前には考えられなかった価値観ですが、「子供は老後の面倒を見させるために育てたのではない。子供を育てる過程で十分その楽しさを味わった。それだけで子供を産んでよかったと思っている。

子供の大切な将来を犠牲にしてまで自分の人生に付き合わせようなどと考えていない」という今のシニア世代の新しい考えは、非常に潔く清々しささえ感じるものです。

遠くに住んでいる子供や孫とは「盆暮れに会えればそれでいい」と割り切っている方がとても多く、それを当たり前のこととして受け止めています。
では今のシニア世代は自分の人生の最後のために何をすべきなのでしょうか?

経済的なことをきちんと考えている

大多数のシニア層は「子供を当てにせずとも、介護を受けやがて死を迎える」ことを予測し、ある程度まとまったお金を持っている、あるいは準備しようとしているのだそうです。「子供を当てにしない代わりにお金で解決しよう」という考えのもとなのでしょう。

今のシニアの方々は高度経済成長期というとてもいい時代に就職し、また「正社員でありながら貧困層になる」という今の社会が考えられない時代に退職できた方々ではないでしょうか?
その結果老後に困ることのない「退職金」や「年金」をもらっている方も多いのでしょう。

しかしそれでも最後まで面倒を見てくれる「有料老人ホーム」は驚くほど高額です。
また高額にもかかわらず、認知症になったときでも置いてくれたり、病気で死を迎える時までいさせてくれる老人ホームは非常に少ないのが現状です。
また病院はたとえ末期がん患者であっても手術をして1か月後には退院させます。
昔のように病院で死ぬということが難しい時代にもなったのです。

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そういった背景からシニアの方々が検討しているのが、全国にある主にNPO法人が運営している「グループホーム」です。
「グループホーム」は2008年ごろに全国各地にできた新しいタイプの施設です。

そこに入れる条件は、「そのグループホームと同じ市町村に住民票があること」「認知症と診断された医師の診断書が必要なこと」「65歳以上であること」「入居時に15万円から場所によっては1千万円近くの入居金を払い、なおかつ月々の費用も10万円から30万円程度支払わなくてはならない」などです。

グループホームは都市部ほど費用が高くなり、地方に行けば行くほど安くなります。
「どこに行ったって同じ」と考えられる人でしたら、地方のグループホームをお勧めします。
現在グループホームを希望する方は非常に多く、順番待ちのケースが大多数です。
それでも半年ほどでほとんどの方が入所できるそうです。
ですので、シニア世代の子供たちも、自分の家で何年も介護し続けることが無理であっても「半年と割り切れば仕事を休職して何とか介護ができるのでは?」と考えるそうです。

ですがもちろん、経済的にそこまで恵まれていない方も当然います。
シニア世代のすべての人がまとまった預貯金があるわけではありません。
また中には、一生独身だった、あるいは子供がいない方も多いでしょう。
その方たちが「老後と人生の終わりをどう迎えるか」ということを考えるのは、公的機関を最大限利用しよう、というものです。

公的な「養護施設」はその方の経済状況や家族構成、子供が仕事上の都合や経済的な問題で介護できないときに引き受けてくれる心強い施設です。
また本人の経済状況に合わせて月々の使用量が定められるため、ほとんどの方が年金内で支払うことが可能だそうです。

その上そういった年金ももらうことができない、財産などがほとんどない場合、生活保護を受けるということで解決しているお年寄りもいます。
市町村の運営する老人ホームは確かに競争率が高いのですが、まだ元気で活動できるうちに申請手続きをしておけば、自分が動けなくなった時に順番が回ってくるかもしれません。

また要介護度が低い方は「ケアハウス」という手もあります。
「ケアハウス」はまだそこまで認知症が進んでいない方たちが、共同で生活する場所です。
費用も高くなく、また介護スタッフも常時いることも心強く感じる施設です。
こちらも老後を子供に頼らない、と考えている方に人気の施設です。

こういった施設は、以前はまるで「姥捨て山」のように考えられていましたが、実際に入ってみると同世代ということからか友達が増え楽しく過ごせたり、家にいるよりも手厚い介護が受けられ、また「孤独」ということを一切感じないで過ごせる、家で子供や嫁に看てもらうよりはるかに良い、という感想を持つ方がほとんどなのです。
シニア世代もシニア世代の子供も、「子供から見捨てられた」「親を放り出してしまった」などネガティブな考えを持たなくていい時代になったのです。

友達の重要性

数年前からテレビでよく「墓友」がクローズアップされるようになりました。
元気なうちに自分が入るべきお墓を決めてしまい、戒名も高い個人の墓もいらない、と思う人が増え、ポジティブな考えに則った「共同墓地」を希望する女性が増えてきたというものです。

将来一緒にお墓に眠るだろうという人々と、楽しそうに交流している女性グループが紹介されているのをご覧になった方も多いと思います。
それはなにも「墓友」だけに限ったことではありません。
「おひとりさまの老後」の著者として名高い上野千鶴子氏も、老後においての友達の重要性を唱えています。

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子供に負い目を感じながら残りの人生を過ごすよりも、同じ世代の者同士一緒に生きていったほうがはるかに楽しい、と上野氏はその著書の中で言っています。
年を取ってつらいと感じるのは「話し相手がいないこと」、を一番に挙げるシニアの方が多いということを考えても、年齢がいけばいくほど友達や知り合いとのご近所付き合いがいかに大切かがわかります。

確かに子供もある程度話し相手にはなるでしょう。
ですが自分の考えや価値観に心から共感してくれるのは、同じ世代を生きてきた「同志」のような存在ではないでしょうか?

もし周りにそういった存在がいない、今まで子育てや仕事オンリーの生活をしてきたため友人が少ない、そんな方は老後のために必要な資金を貯めつつ、積極的に友人を作る活動をされることをお勧めします。
実際にある程度の年齢になった方に聞いてみると、「年を重ねて友人を作ることはそれほど難しいことではない」そうです。
また上野千鶴子氏が常々その著書の中で言っているのは「おひとりさま」の生活を楽しもう、ということです。

他人に依存する人に本当の友達はできませんし、またそういう親には子供から見ても負担に感じる存在になり、余計に寄り付かなくなります。
極端な話、だれからも看取られることなく自宅で亡くなったとしても、それはそんなに不幸なことでしょうか?

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誰しも病気が悪化したときは、昏睡状態になり、当然周りに誰がいるのかなどということはわからないはずです。
「死」と「孤独」を極端に恐れる必要はないのです。
「おひとりさま」を十分楽しめ、自立した人間であること、それが新しい老後のスタイルを享受できる条件になるのではないでしょうか?