60歳からの男と女 ~
第1回 都会に住むか、地方に暮らすかについて

都会は若者よりむしろシニアが住むべき場所?


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実は過酷、田舎でのスローライフ

シニア世代の方に一時流行った「退職後は田舎に住んで農業をやりながらスローライフを楽しみたい」という考え方、今となってはもう古いということをご存知でしょうか?

ある調査によると、そういう考えのもと、田舎に田畑も含めた不動産を買い、「実際に夢に見たスローライフ」をやってみたシニアの方の約4割が、3年以内に都会に戻っているそうです。
そこには理想と現実とのギャップがあるのです。

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一つ目の要因は、田舎暮らしはまず車がないと生きていけないことです。
歩いて5分以内にスーパーがある田舎など滅多にありません。
都会ではもう年だから、と車の免許を返上しても生きていけますが、田舎でそれをやってしまえば「死活問題」になります。

いくら年をとり運転に自信がなくなっても、後続の車からクラクションを鳴らされるほど遅く不安定な運転をしようと、免許返上などできないのです。
また年を取れば病気がちになります。そんな場合でも通院の手段に使うのはマイカーです。自分または家族の誰かが運転して行かなければならないのです。
都会では、もし病気になったとしても電車で通院できますが、田舎ではそうはいきません。

二つ目の原因は思った以上に人間関係が難しいということです。
「田舎の人」=「純朴であたたかい」と思っていたのに、実際はその土地に受け入れてもらうためには、相当な努力を強いられる場合のほうが圧倒的に多いのです。
田舎に住む人は概して土地柄はあっても閉鎖的な人々が多いので、都会で失われている「お互い助け合う近所づきあい」を期待して移り住んだ人のほとんどが、「こんなはずじゃなかった」と思うそうです。

田舎ほど他所者意識が強く、その地域によっては「10年以上住み続けなければその土地の人間として認めない」、もっと酷い所になると「3代前以上この土地に住んでいない人間とは付き合わない」など、その頑なさに驚くシニアの方が多いのです。
そして三つ目に挙げられるのは、農業が想像したよりはるかにきついものであるということです。

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農業に従事したことのある方ならおわかりでしょうが、農業はかなりの重労働で若者でさえも投げ出したくなるほどです。
60歳で地方に移り住んだ方は最初の内はまだまだ体力もあり、また農業に新鮮さを感じるため「これぞ田舎暮らしの醍醐味」と思っても、いつまでも60歳のままいるわけではありません。

年を取るにつれ田畑を持て余すようになってしまいます。
またたとえどんな理由があっても所有している田畑をほったらかしにすれば、市町村から注意勧告や罰金を受けることを知らない方も多いでしょう。
やりたくなくてもやらざるを得ない農業。

その壁にぶち当たって新しく「田舎暮らしにロマンを感じている」定年退職したての人に、売ってしまい都会に舞い戻る、そんな方が多いのです。

シニアにとっての田舎の魅力と都会の魅力

定年退職を迎え「今までさんざん働いてきたのだから自分の時間を大切にしたい」、そう思う方こそ都会暮らしをすべきです。
都会には田舎にない長所がたくさんあります。
例えば東京には日本を代表する美術館、博物館、劇場、コンサートホールなどがあります。

一流の芸術に触れられる機会は地方に比べ断然多いのです。
また年齢を重ねた人が友人を作る機会に恵まれるのも、実は田舎よりも都会の方であることをご存知でしょうか?

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人口の多い場所はあらゆる面で選択の自由を与えてくれます。
シニア世代になって何かのサークルに入りたい、こういった活動をしてみたい、こんな習い事をしてみたい、そんな要望に応えられるのも都会のいいところです。

東京や大阪などは元々人の流動が多い場所ですから、どこで生まれどこにどのくらい住んでいたか、そんなことにこだわる場所ではありません。
何年以上住まないと友達とは思わない、そんな都市部に住む人に会ったことがあるでしょうか?

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ウマさえ合えば一気にその人との距離が縮まる、そんな出会いも都会のほうが多いですし、目的別に接点のある人を探せるのも都会のほうがチャンスは多いでしょう。
では田舎に住むメリットは全くないのか? と思ってしまいますよね?

田舎に住むメリットも確かにあります。
まず人込みや雑踏のストレスがない。
物価が安い。家賃が安い。そして車さえ何とかなれば郊外の大型スーパーで1週間分まとめ買いもできる、などです。

あとは自然に囲まれて生きられる、それも大きな魅力でしょう。
ただし何事にも「飽き」は来ます。自然も見慣れると当たり前に感じ、刺激が多い都会の生活が懐かしくなるかもしれません。

再就職が簡単なのも都会

また定年を迎えたけれどまだまだチャンスがあるのなら働きたい、そんな方も大勢いらっしゃるでしょう。
ではシニアの求人で最も多い都道府県はどこか? と言いますとやはり東京、大阪、名古屋、仙台などのその地域を代表する都市部になってしまいます。

地方でもシニアの求人はあることはあります。
ですが、ずっと一流企業のサラリーマンだった、あるいはその道ではスペシャリストだった、
何十人も部下をマネージメントする立場だった、そんな方が満足できる田舎の求人はなかなかありません。

田舎におけるシニアの求人はほとんどが「警備員」や「清掃員」、女性だったら「工場の流れ作業」か「スーパーのレジ、惣菜作り」などです。
自分の現役時代に誇りを持っている方はこんな求人しかない土地に満足するでしょうか?
チャンスさえあれば定年後も引き続き働きたい、そう思ってらっしゃるシニアの方は都会にとどまるか都会に引っ越すことをお勧めします。

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やはり「故郷は遠きにありて想うもの」なのか

中には地方出身者だったけれども、進学や就職のために長年都市部に住んできた、そんな方もいらっしゃるでしょう。
生まれた場所で残りの人生を過ごしたい、あるいは死を迎えたい、そう思う方も多いかもしれません。

ですが40年以上の歳月が流れている「故郷」はある意味、もう「知らない土地と同様」になってしまっていることに愕然とする方が多いそうです。
それは最初に挙げた「スローライフに憧れて地方に越してきたシニアの方」同様、「こんなはずじゃなかった」と思う点が多々あるからだそうです。

いずれにしても住む場所を変えること、永住しようと特定の地域を決めることは勇気を必要としますし、大きな経済的負担も伴うことです。
同じような動機で参考になる体験を持ってらっしゃる方に、一度ご相談してから決めることをお勧めします。

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